ある大阪の女
大阪本町の問屋街。アヤ子は浅井産業事務所で机をならべる西村進と婚約の仲だが、気の弱いうえ、病苦の母を抱えて借金に悩む進は、新家庭を持つこともできず、安ホテルで愛情をたしかめ合うのが精一杯であった。貧民街のアヤ子の家では、ヤクザの弟建二が勤め先の品物に手をつけたばかりに、*埋めのため父の準造が勤務先の二十万円を費消、矢のような催促をうけている。準造は朝からヤケ酒を呑み、アヤ子や幸子と口論の絶え間がない。こんな時、アヤ子の頭に浮かんだのは、浅井社長が妻すみの眼をかすめてアヤ子に預けていたヘソクリだ。浅井に無断で二十万円を借金の支払いに回わしてしまったアヤ子は、浅井にすべてを打ち明けた。「気にしいな」と、浅井はみずみずしいアヤ子の体を抱きしめた。アヤ子は郊外の豪華アパートに移り、浅井は足しげく通い続けた。一方、すっかりぐれてしまった建二は、せっかく勤めた町...