霧の第三棧橋又名霧の第三桟橋
横浜港の検疫医浜崎俊は貨物船の中で盲腸で苦しんでいた美貌の朱麗蘭を病院に送りこんだが、彼女こそ香港のギャンブルボス劉丁徳の手先で、一足先に入国した劉の許に密輸宝石を運ぶ所だったのだ。劉はある楽団のマネージャーになりすまして賭博、ドル買いに暗躍し、当局の必死の捜査も確証を得るに至っていなかった。浜崎には宇野純子という恋人があったが、現在の仕事に満足しない彼は、麗蘭の手づるで香港に渡り、自分の惨めな境遇を飛び出したいと思っていた。既に浜崎に惹かれていた麗蘭もまた彼のためならばどんなことでもしようと約束した。当局の目が厳しくなって仕事に支障を来してきた劉は、麻薬の陸揚げに浜崎を利用することを麗蘭に命じた。麗蘭は劉には大恩があるし、かと言って浜崎を瞞す事は出来ないし、思い悩んだ。麗蘭との関係を案じた浜崎の友人浦上刑事の忠告をも聞きいれなかった浜崎も、純子の父...