めくら狼
時は文明開花の頃、捨子で盲目という、人呼んで"めくら狼"と恐れられる侠客がいた。三味線の名人野沢六兵衛門に拾われ名も拾五郎と呼ばれその芸をひきついだ。竹本菊之助節と捨五郎の三味線は大阪でも人気があった。しかし、師匠の一人娘お春との結婚の夢破れた捨五郎は、自暴自棄になり泥沼の世界に入っていった。そんなある日、捨五郎は父親の博奕の質代りとして追われる娘志乃を地廻りの遠州屋一家から救った。同じような星の下に生れ、肩を寄せ合ってなぐさめ合う二人、志乃は捨五郎に慕情を抱くようになったが、うらみを持った遠州屋の追跡も続いた。志乃の母を探して大阪に来た二人は、侮りと蔑みをうけ、あげくの果て、大伝一家の身内と乱闘になった。その場を救ってくれたのは、かっての弟弟子の今は横網格の人気をもつ竹本菊之助であった。菊之助の好意で幸福な生活を始めた二人だったが、ある日師を訪ねた...