三羽烏三代記
大日本探偵社社員、南条康介は仕事におい廻されて恋人の草野綾子とデイトも出来ない有様を嘆いていた。綾子は康介の下宿先、古い暖簾を誇る浅草の煎餅屋「入河」の看板娘であった。「入河」は綾子の姉秀子の実権下にあり、夫の雄之助は康介にこの家に代々続く婿養子の宿命を説いて*めた。安月給の康介は秀子に反対されて綾子と結婚出来なかった。お茶漬や「ひさご」では大学教授の土屋信行と大日本探偵社社長赤沢俊哉が飲んでいた。「ひさご」のマダムは昔土屋とロマンスを語った伊丹夏代である。店の奥では新聞記者の辰巳**が飲んでいた。テレビ・プロデューサーの恋人小池さわ子はいくら待っても現われなかった。いつもデイトをすっぽかすのはリハーサルのためだった。康介や**と仲間の高見明は登山を生きがいとする山男だった。妻の弓枝は勿論大いに不満であった。高見家の下宿人、城山茂夫は音楽学校の生徒で...