ことぶき座
ユーチューブで映画「ことぶき座」(監督・原研吉・1945年)を観た。この映画が作られたのは、敗戦直前の昭和20年6月、当時の社会状況、日本人の意識を知るには恰好の作品であると思う。登場人物の*装は、男は戦闘帽に軍*、女はモンペ姿、「撃ちてし止まん」「欲しがりません勝つまでは」といった意識が津々浦々にまで行き渡っていたことがよく分かる。私は当初、これは軍隊の映画だと思ったが、主人公は梅中軒鶴丸(高田浩吉)という浪曲師であった。北海道に*問に訪れる芸人一行のリーダー格が鶴丸で、彼には8年前、釧路で1年半ほど過ごした「青春の(苦い)思い出」があった。道中の列車の中で彼は回想する。 舞台は釧路の「ことぶき座」、鶴丸の人気は絶頂で連日大入りの盛況ぶりだが、今ひとつ鶴丸の身が入らない。興行主・鈴村(小杉勇)の娘・千代(高峰三枝子)に惚れてしまったか、それを言い出...