関の弥太ッぺ
甲州街道は桜の山道で追いつ追われつの果しあい、しゃにむに斬ってかかるのは箱田の森介、もてあましぎみなのは関の彌太郎。やくざの意地でいやでも命のやりとりの義理はあるが、折しも預りものの金子五十両を盗まれ、気が気ではない彌太郎は、崖からとび下りて森介をまき、桂川沿いに当の盗人、幼い娘をつれた堺の和吉を追いつめた。反抗する和吉を止むなく斬った彼は、意外にも和吉から娘小夜を吉井宿の旅館沢井屋へ預けてくれ、と頼まれる。かつて沢井屋の娘すえと駈落ちし、その女房に死なれたあげくの思案であった。沢井屋に現われた彌太郎が小夜を預けようと後家おさん、嫁のすみとかけあう最中、執念く後を追ってきた森介に挑まれ、虎の子の五十両を小夜の向う十年間の食扶持として投げだしたまま、桂川の河原に走り出る。数十合の後彌太郎は相手の脚を斬り、全快して出直せ、といいのこして姿をけした。--そ...