暗之中的魑魅魍魉原名:闇の中の魑魅魍魎,又名Yami no naka no chimimoryo
絵師金蔵は二十歳。長身、たくましい骨大な体躯。しかし、彼の評判はよくない。きちがい、変態という蔭口がたたかれ、事実、彼は傲慢で不潔であった。天才が常にそうであるように、彼もまた自らを信じることが強かった。彼の母は髪結である。父も髪結である。彼の才能を発見したのは母親クメだった。母は彼を士分待遇の御城絵師に仕立てようと異常な情熱をたぎらせた。金蔵の才能を買った師の推せんと母の熱望によって彼は江戸に遊学した。出京するや早速師についた金蔵だったが、すでに自らを権力にならすことによって、保身の安定をはかろうとする狩野派の**はひどく、そこには人工美はあっても生きた美はなかった。こうして、政治と文化の中心である江戸に失望してゆき、女にはしり、酒におぼれ、刺青の倒錯の魔力に魅せられていった。三年の歳月が流れ、彼は土佐へ帰った。城下は不気味な胎動をはらみ、友人武田...